井原研究室の研究内容

都市気候とエネルギー

研究の背景

地球温暖化やヒートアイランド現象により、都市の気温は急速に上昇しています。これに伴い、冷房エネルギー需要、ひいてはCO2排出量の増大が懸念されています。

ライフサイクル的思考の導入

● 一側面だけ取り上げると、、、

冷房エネルギー需要を抑制するために、気温を低下する対策を導入すれば良い!

● ライフサイクル的思考に基づくと、、、

気温の低下は、冬季の暖房エネルギー需要の抑制につながる。また、対策の製造や運用もエネルギーの投入を必要とするため、CO2排出量の増大につながる。一方、気温を低下する対策は、対策によって昼夜別・季節別の気温低下量は異なり、必要なエネルギー消費も異なる。そこで、都市気候とエネルギー需要の関係を総合的に把握して、真にエネルギー需要やCO2排出量を抑制する対策を導入するのが良い。

研究の内容

気象要素と電力需要の関係解析

独自の観測データや電力会社から提供を受けた実電力需要データを解析することによって、街区ごとに気温や湿度など気象要素とエネルギー需要の関係の評価を進めています。これにより、街区構造によって異なる気象要素とエネルギー需要の関係が明らかになり、望ましい気温低下量や必要な対策がわかってきます。

都市気象-建築エネルギー需要連成シミュレーション

当研究室では、都市気象計算と建築エネルギー需要計算を連成させたシミュレーションモデルを開発しています。両者を連成させることにより、気温上昇でエアコンを付ける→エアコンの室外機から排熱→また気温上昇、という悪循環が評価できます。また夏季昼間だけではなく365日24時間の連続計算が可能であるため、対策を導入した場合の夜間や冬季の状況も計算でき、対策がライフサイクルの観点から望ましいかどうか、の評価ができます。

気温低下技術のライフサイクルアセスメント(LCA)

もちろん、気温を低下させる対策技術(ヒートアイランド対策、地球温暖化対策)のライフサイクルアセスメントもおこなっています。対策使用時の空調エネルギー需要は上記のシミュレーションによって計算できますが、製造や運用あるいは廃棄に伴うCO2排出量は、個別にプロセスを調査し、インベントリ分析をおこなうことで、求めます。

研究プロジェクト

進行中

● 科学研究費補助金・基盤研究(B)「都市気象・建物エネルギー連成数値モデルの熱環境・電力需給予測への実証的適用」(24360218)(研究代表者: 亀卦川幸浩・明星大学教授)

大阪市において高解像度の気象観測を実施し、気温のみならず湿度や日射量などさまざまな気象要素と電力需要の関係を探っています。得られた結果は、都市気候・建物エネルギー連成シミュレーションモデルCM-BEMの改良に用い、さまざまな技術のエネルギー削減効果や自然エネルギーの発電ポテンシャルの評価をおこなっていく予定です。

● 科学技術振興機構低炭素社会戦略センターとの共同研究

i-cosmosと呼ばれる電力計測システムを用い、関東や関西において300世帯以上の家庭の電力需要を計測し、世帯員に対する調査と合わせて、省エネルギーのポテンシャルを探っています。得られた結果は、各種の低炭素施策の評価に用いていく予定です。

終了